たしか高校3年生
部活はなくなったが受験勉強するわけでもなく
学校帰りのガストに集まり、暇を持て余しすぎてダラダラと時間を潰していた頃のこと
午後3時とかに5、6人で入ってご飯食べて
バイトある奴は夕方出て行ったりして
ダラダラしてる間に夜になって 晩御飯食べて
バイト行った奴が終わって帰ってきたりして
深夜になって夜食を食べたりして
そんなある日
たしか深夜12時ごろ
「お台場行く?」
と誰かが言い出し
「でも車ないな」
「チャリでもよくね!?」
「よし行くか!!!」
って感じで、いきなりお台場行くことになった。
さっきまでなんのやる気もなくだらけてた男たちは立ち上がった
それは信じられないほどのハイテンション
暇そうなやつに電話掛けて何人か合流して
7、8人が集合
ものすごいスピードで深夜の国道を駆け抜けて
つきました
レインボーブリッジ!!
どうやって橋を渡るかまったく考えていなかった僕たちは橋の手前で立ち往生
昼間はEVで橋まで上がって、歩いて渡れる歩道があるみたいなんだけど
今は深夜。とっくに閉まって入れそうもない。
車道は首都高の下(ゆりかもめと併走する道路)しかないが、夜は車の速度が早いため原付の通行も禁止になっている。
短い会議の結果
『車道を、すごく早く自転車こいで渡る』に決定
車の途切れたタイミングを見計らってスタート
ぐるっと大きく円を描いてから橋に到達するんだけど
上り坂の勾配も思った以上にきつく 10秒ぐらいでみるみる失速
そして隣を駆け抜ける車の早いこと早いこと
クラクションを鳴らしながらギリギリのところを追い抜いていく
「あー、これは死ぬな」とうすうす気づき始めたけど もう遅い
とにかくがむしゃらにこいで レインボーブリッジの入り口付近に到達
そして絶望
橋に入ってから車道がさらに狭くなり、車が通るスペースしかない
今でさえスレスレを100km以上の速度でビュンビュン追い抜いていってるのに
これ以上狭くなったら確実に撥ねられる
しかしもう危なくて来た道も戻れない
一番危険な場所で立ち止まってしまった僕たちは、真顔でなんとか生還する道を探す。
そこで一か八かの作戦を考える
今みんなで立ち止まっているのは緩いカーブの内側。
車道を渡った反対側、緩いカーブの外側に昼間開放している歩道がある。
1.5mくらいのフェンスをよじ登れば歩道をゆっくり通ってレインボーブリッジを渡ることができる。
しかし
今居るのがちょうどカーブの終わるところだから、走ってくる車からは僕らが見えない。深夜だからみんな飛ばしている
車道は2車線。車の来ないタイミングで渡るしかない。
ここからは個人プレー
各自 自分のタイミングで一気に走る
1人、2人と絶妙なタイミングで渡っていく
轢かれないのが不思議なくらいの奇跡のタイミング
そして俺も渡る
アドレナリンが出すぎたせいか 正直、自分で渡ったときの記憶がない
どうやったのかわからないけど 気づいたときには歩道へのフェンスを必死でよじ登っていた。
無事全員が歩道に入り、至福の表情でレインボーブリッジを渡る。
本当は橋を降りるときにまた同じように命がけで車道を渡らなければいけないはずだけど、危機を乗り切った満足感で 誰もそんなことは考えない
橋の真ん中くらいで休憩し 記念にと写真を撮ったそのとき
赤いランプをクルクル回した お洒落な車が2台到着
ぶつかりそうになった何台かの車が通報したんだそうな車
「ヤバイ!」というよりは「助かった!」という心境のほうがはるかに大きい
そのままお巡りさんと共に目的地のお台場へ上陸
交番で事情聴取を受けるも、なんだかんだ注意だけで開放してくれ
親切に帰りのルートとしてレインボーブリッジを通らない道まで教えてくれた。
そして朝 通勤途中のサラリーマンをよけながら 朝日を背にチャリで東京を駆け抜ける自転車
そのままみんなで学校へ
珍しく1人も遅刻せずに登校
しかし徹夜と疲れとで授業も休み時間も 1日中寝てた
運悪く体育の授業があって ゲロ吐きそうになりながらバトミントンかなんかをやった気がする
今度レインボーブリッジを車で渡ることがあったら、想像してみてください
隣をチャリで駆け抜ける真顔の少年たちを
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